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ビジネス 経営学

経営戦略を語る上で欠かせない本と人物

2017/03/18

経営戦略論の歴史は、非常に興味深く、面白いです。
様々な理論やフレームワークは出ては、また新しいものが出てきますが、それでも過去の理論や考えに触れるのは重要なことだと思っています。

「巨人の肩の上にのる」という言葉があるように、先人の積み重ねた発見に基づいて、自身が何か発見したり、吸収することができます。
理論と実務を反復運動することで、さらにビジネスリテラシーが磨かれていくのではないでしょうか。

荒削りながら、経営戦略の巨人たちとおすすめの経営戦略の本を紹介します。

近代マネジメント

ここらへんは、経営戦略の土台をつくってます。
たぶん、ドラッカーなどもここに入るのだと思いますが、なんの本を紹介してよいのかが難しいので、今回は割愛します。

科学的管理法/テイラー

経営戦略というか、経営学の源流になっている本です。そうあってか、テイラーは「マネジメントの父」なんて呼ばれています。
「マネジメントの目的は、雇用主に限りない繁栄をもたらし、併せて、働き手に最大限の豊かさを届けることであるべきだ」とし、雇用主だけではなく、働き手にも賃金の向上目指したものでした。永遠の課題ですね。
このテイラーの科学的管理法を実務で活かしたのが自動車会社であるフォードのフォード生産システムです。
T型フォードが発展した鍵にもなる理論です。
現在においても、科学的管理法の活用は飲食店などで活用されているところもあります。

人間関係論/メイヨー

メイヨー、レスリスバーガーは組織における人間的側面の重要性を重視し、人間関係論を展開した人物です。ホーソン実験が有名です。
モチベーションやリーダーシップなどの研究、小集団活動などの源流にもなっています。
手に入る本でいい本があんまりなく、経営学の教科書的なので概要をみておくといいでしょう。

産業および一般の管理/ファヨール

アンリ・ファヨールはフレデリック・テイラーとともに経営管理論の礎を築いた一人です。
企業における必要不可欠な活動を6つに、経営活動を5つの要素に分類・整理しました。

アンリ・ファヨールの「産業および一般の管理」にそれらが記されておりますが、本書はプレミアがついており、入手することが難しいです。
そのため、商学部・経営学の設置されている大学の図書館においてあると思うので、それを読むことをおすすめします。
普通に復刊しないのかな。

紹介している本は人物をまとめた本です。

経営者の役割/チェスター・バーナード

チェスター・バーナードはタイトルのとおり、経営者の役割は重いと主張しています。企業は組織ではなく、システムとして定義し、自らの組織に「共通の目的」を与えるのは経営者の役割と主張しています。
「経営者の役割」は、抽象度が非常に高く、翻訳にも難があります。この本は読みづらかった。

ポジショニング派

経営戦略という言葉、概念が生まれ、どういうふうにしたら、競争優位を築けるか。
シナジー、差別化、事業部制という言葉も出たのもこのとき。

アンゾフ経営戦略論/イゴール・アンゾフ

経営に戦略という概念として、初めて持ち込んだのがイゴール・アンゾフです。
中でも有名なのが、アンゾフのマトリクスです。製品と市場を軸にどのように戦略を立てればよいのかを明示しました。
また、事業間の相乗効果のことをシナジーと呼び、今日でも知れ渡っている概念です。

本書は、「経営の戦略」というのであれば源流になります。

組織は戦略に従う/アルフレッド・チャンドラー

企業戦略とは何かを打ち出したアルフレッド・チャンドラー。チャンドラーは歴史学者であり、企業4社の詳細な戦略・組織研究の結果を「組織は戦略に従う」に記します。集権的職能別組織から事業部制への転換を詳細に記されており、事業部制の教科書になりました。
その結果、事業部制の組織がどんどんと増えていくことになります。ただ、関連性のない多角化が増えてしまいました。シナジーという幻想。

マーケティング・マネジメント/フィリップ・コトラー

マーケティングを整理し、普及させたのがフィリップ・コトラーです。
コトラーはマーケティングの父などもいわれ、「マーケティング・マネジメント」という本はマーケティングの教科書として数十年にも渡って君臨しています。
マーケティングの体系化を目指した本であり、STP,MMなど重要な概念は今日でも不可欠なものになっています。

競争の戦略/マイケル・ポーター

ファイブフォース分析、バリューチェーンといえば、マイケル・ポーターです。
ここで大きく経営戦略も変わっていきます。今までの経営戦略にはない衝撃を与えます。

業界の定義と構造、自社にかかる圧力を測り、儲けられる市場かどうかを判断できるファイブフォース分析を世に出した点、
3つの中から儲かるポジショニングを定義し、経営戦略とはポジショニングの選択であると主張しました。
極論、頑張っても儲からない市場であれば、参入すべきではないというのがポジショニング派の意見。

ケイパビリティ派

ポジショニングをするよりも企業内部の資源が大事だよね、組織能力が必要だよねという流れ。当時成長していた日本企業の強さが参考になっている点は特徴のひとつ。

タイムベース戦略/ジョージ,Jr. ストーク

当時の日本の成長は何かを、BCGのコンサルタントが探って、鍵となったのが「時間」であったということ。
時間短縮をもって競争優位になると主張したのが本書です。
日本の成長はなんなのさを米国のコンサルタントが調べて、それを本にしたという。本来は日本でそういう点を打ち出して、一般化させて、他の企業にも活用できれば・・・という流れがあったら、今はもっと変わっていたのでしょうか。

リエンジニアリング革命/マイケル ハマー,ジェイムズ チャンピー

業務プロセスの視点で、既存のビジネスをどう再構築するかということを説いた本。
たぶん、本書は日本でもベストセラーになった。参考にされていたのは日本であったが・・・逆輸入的な要素もありますね。

コア・コンピタンス経営/ゲイリー ハメル,プラハラード,C.K

自社能力(ケイパビリティ)の重要性について書いた本。日本企業の例も出てきます。
外向きのポジショニングから、内部資源の重要性に向いた時代になりました。
自社のコア・コンピタンスはこれだと定義するのは難しいです。

知識創造企業/野中郁次郎,竹内 弘高

日本の経営学者が世界に発信した経営理論。
「暗黙知」と「形式知」の2つの知識を循環させていくことで、競争優位性が築けると主張しました。
この時期にナレッジマネジメントという言葉も有名になりました。本書は哲学的要素が強いですが、個人的には今でも重要な一般化されて理論だと思っています。

企業戦略論/ジェイ・B・バーニー

内部資源論(リソース・ベースト・ビュー)で代表されるバーニー。ポジショニング派とは対立構造にあります。
VRIO分析というフレームワークで、持続的な競争優位に築くということを主張しました。
上中下になっている「企業戦略論」はMBAテキストでも有名です。

コンフィギュレーション派

ポジショニング学派とケイパビリティ派のいいとこどり。厳密にいえば、チャンドラーとヘンリー・ミンツバーグが代表格。
「バランスト・スコアカード」、「ブルーオーシャン戦略」など新しいコンセプトの経営書も出てきます。

戦略サファリ/ヘンリー ミンツバーグ

コンフィグレーション派の代表格。
ポジショニングもケイパビリティもどっちも大事だよっていうスタンス。
戦略は計画ではなく、創発だよっていうことも言っている。

バランスト・スコアカード/ロバート・S. キャプラン,デビッド・P. ノートン

業績評価システム。一時とても流行っていました。
戦略・ビジョンを4つの視点(財務の視点・顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と成長の視点)で分類して、企業の持つ戦略やビジョンと関連して財務的指標、及び非財務的指標を設定する必要があって、とても設計するのに大変だったともいわれています。

ブルーオーシャン戦略/W・チャン・キム,レネ・モボルニュ

競争のない未開拓市場(ブルーオーシャン)に参入することの重要性を説いている。
新規事業や事業ドメインを考える際に、必要な内容が書かれています。
ビジネス・キャンバスは新規事業を作る際にも使えるフレームワークですね。

経済学の視点が経営戦略へ

経済学の視点が経営戦略にも使われるようになる。ポーターは経済学からのアプローチだけれど、ここで言いたいのは、今までの経済理論が、経営戦略に用いられたという点、シュンペーターの「経済発展の理論」やゲーム理論は経営戦略論にも登場する。

経済発展の理論/シュンペーター

イノベーションの源流。イノベーションはここから始まりました。
シュンペーター自体は経済学者であるので、本書は景気循環の過程がより緻密に考察されている。
景気循環をより良くするためにも、イノベーションが必要だという話で、別に、イノベーション=技術革新ではないんですよね。
テクノロジーが成長したことで、大きな革新をもたらし、社会的に利益になったという例でイノベーションは起きるのはそうですが、もっと広い概念でイノベーションは定義付けられています。

ゲーム理論

ミクロ経済学にも扱われるゲーム理論が経営戦略にも扱われるようになった。相手の出方を考えながら、自分の次の1手を考えるという点で非常に有益な理論です。
価格や交渉力など戦術的な要素が強い内容であるが、経営戦略論を扱う上で、こういった流れも出てきました。

イノベーション、そして

新規事業を生み出すために。
経営戦略を把握しつつ、自社でイノベーションを出すための方向へ。

イノベーションのジレンマ/クレイトン・クリステンセン

大企業がなぜイノベーションを生み出せないのかを明示させた理論。現代経営においては必読書。
大企業にいる人は全員読むべきだと思っています。
本書のとおり、イノベーションは出すことが難しい構造になってしまいがちではあります。

リバース・イノベーション/ビジャイ・ゴビンダラジャン

リバース・イノベーションとは途上国で最初に採用されたイノベーションのことを指します。
BOP市場を考える上で重要なコンセプトです。本書は事例とリバース・イノベーションをつくりだす組織の作り方が書かれており、非常に刺激的な内容です。

アントレプレナーシップの教科書/スティーブン G ブランク

企業家必読書。顧客開発モデルを紹介されています。
スタートアップの失敗をしにくくするためにはどうすればよいかを細かなプロセスで記されています。タイトルとおり、教科書的な位置づけになっていて、体型立てられておりおすすめです。

リーンスタートアップ/エリック・リース

こちらも企業家必読書。
必要最小限で仮説検証しながら、製品・サービスを生み出す過程を紹介している。ここらへんの話は長くなっちゃうので、割愛。
ただ、読むべき本の一つです。

経営戦略を俯瞰するなら

経営戦略を歴史から俯瞰する上で助けになる本を紹介します。

経営戦略全史

経営戦略を俯瞰する上で「経営戦略全史」という本がとてもおすすめです。
めちゃくちゃ読みやすいうえに面白く一気に読めてしまいます。
手っ取り早く経営戦略を広く知りたいときに、ぜひ読んだ方がいいです。

経営戦略の巨人たち

アカデミックではなく、コンサルティングの経営戦略史。
コンサルティングの世界からも経験曲線やPPM(ともにボストン・コンサルティング・グループ)が生まれてきて、経営戦略の歴史を知る上では、重要。
経営戦略のフレームワークやツールが生まれた背景を知ることができる名著。

経営戦略の思考法

3部構成になっており、1部が経営戦略の歴史を整理されて書いています。本紹介記事よりも厳密な流れで書いているので、ちゃんと知りたい人にはおすすめです。

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